みなみんの日常

静岡と石川のあいの子。

創作小説

不妊に悩む奥さんが旦那さんに不安を打ち明けるシーンを描いたもの。

 

一場面を切り取って見せる(小説の話)のは得意なんですけど、その前後も重要ですよね…。練習したいなあ。

 

さておき、一人で抱え込むと悩みって重たい。荷物持つよーとか言われるとすっごく嬉しいよね。そんなお話です。

登場人物、実際にありそうなお名前ですが、完全なフィクションなので、そこ、よろしく。

 

簡単な設定だけ。

俊介さん:38(公務員)

葉純さん:26(公務員)

 

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「焦って、ないですよ。」
伝えようとした言葉は思いの外弱く響いた。
あぁ、ちょっと弱ってるな、そんな感じがする。

「…そう?」

でも、いつだってこの人には
私のことは全部お見通しなのだ。
見透かされて、私をびっくりさせて。
そして、安心させてくれる。
この人に隠し事なんて、できない。

「焦ってない、けど、俊介さんとの子ども、早く欲しいですよぉ。」
何度も言おうとし続けて言えなかった言葉がぽろり、とこぼれた。

ぽん、と大きな手が私の頭を包む。
「ねぇ、葉純さん。」
すぐ近くに、俊介さんの顔があった。
いつもの笑顔だ。

「いろいろとね、葉純さんから聞いてきたでしょ。
葉純さんが、俺との子ども欲しいって思ってくれてるのも、わかってるよ。ありがとう。」

その言葉で、ガマンしていた想いが溢れ出した。
私、いつも泣いてるな。
霞む視界の中でそんなことを思った。
きっと、私が泣くのも予想の範囲内だろう。

「私は、まだ良いですよ。俊介さんは「こら。人を年寄り扱いするには早いって。」

本当にいろいろ察されている。
「じゃなくてさ。俺はあなたの身体が心配なんですよ。」

思ってもみないことを言われて、私はきょとんとした。

「……え、私?」

「今まで周りの人を見てきててね、いや、セクハラじゃないですよ。お母さんになるってのは、大変なことなのかなと思ってる。葉純さんは、生理不順とか貧血とかが、あるでしょう。」

セクハラなんて思ってない。
私は素直に頷いた。
「だからこそ、周りと比べちゃいけない。あの人はもう妊娠してる、とかさ、命に遅い早いは関係なくて、あの、俺の言いたいこと伝わってるかな。」

伝わってる。
周りを見渡した時に生まれる、この嫉妬なのかなんなのか分からないどす黒い気持ちを、俊介さんはすっかり消してくれた。

「まずは、葉純さんの身体が一番だよ。そこから、始めよう。ゆっくり二人で歩いていきましょうよ。」

この人を選んで良かった、と思う。
ひたひたと押し寄せるこの気持ちは、何だろう。これが、幸福というものだろうか。

「あり、がとう。」
涙声で私は呟く。
泣きじゃくる私を俊介さんは抱きしめてくれた。
一人じゃない。俊介さんがいてくれる。
それが何よりも心強くて、安心する。